詳細な考証、確かな結論――「周恩来の日本での留学生活」

4月21日から23日まで天津の南開大学で開催された「第6回周恩来研究国際シンポジウム」で、法政大学名誉教授、桜美林大特任教授、周恩来平和研究所所長の王敏氏による「周恩来の日本での詩作の背景に関する考察」という発表を聞くことができた。シンポジウム終了後、王敏氏は筆者に自著『周恩来と日本 日本留学平和遺産』(三和書籍)の、4月5日に出版されたばかりの中国語版を贈ってくれた。発表と書籍を通して、少なくとも次のような特徴的な点があった。

時代ごとに全面的な展開

中華人民共和国成立以前の周恩来の生涯についての研究で最も権威ある著作は、1989年2月に人民出版社と中央文献出版社から出版された『周恩来伝(1898-1949)』である。全37章からなるこの著作で、周恩来の日本での生活に関する章は「東渡日本(日本に渡る)」の1章のみで、字数もわずか1万1000字である。

一方、『周恩来と日本』は、その後の34年間において中国人学者によって日本で出版された唯一の中国語版の著作で、周恩来の日本での生活について最も新しくかつ包括的、体系的な記録であり、文字数は20万字に及ぶ。

現時点において、周恩来の日本での生活に関する最も全面的な最新の研究であり、周恩来の生涯についての研究をさらに深めていく上での標識でもある。少なくとも、周恩来の日本での滞在期間に関する研究では最も総合的であり、系統的なものである。

考証が綿密であり

結論が信頼に足る

本書と発表の最も顕著な特徴や注目点は、綿密な証拠と信頼できる結論である。本書は、1917年9月から1919年4月までの周恩来の日本留学期間を中心に、「周恩来の日本語学校」、「周恩来の学習時間」「周恩来の日本語教科書」、「周恩来の考察:角倉了以の銅像」、「周恩来の考察:大悲閣千光寺」、「周恩来の考察:隠元の弟子・高泉性潡」、「周恩来の考察: 隠元禅師と万福寺」、「周恩来の考察: 琵琶湖疎水と丸山公園」などの内容となっている。

王敏氏は『周恩来 十九歳の東京日記』など多くの資料と現地訪問、インタビューに基づき、周恩来の東京での主要な活動拠点を以下のように整理した。

学校3校:東亜高等予備学校、高等師範学校、第一高等学校

書店3軒:東京堂、丸善、神田の書店

銀行2行:正金銀行、朝鮮銀行

公園3カ所:日比谷公園、上野公園、大久保大山公園

レストラン7軒:中華館、中華楼、漢陽楼、源順号、北京飯店、会元楼、第一楼

衣料品店2軒:三越呉服店、(店名不明の)衣料品店

その他:青年会、朝日新聞社、玉津館、菊富士ホテル、公使館、監督処など。

都内の地名:神田神保町、早稲田、日暮里、上野、浅草、田畑、荒川、九段、本郷、牛込など。

以上のような謹厳な研究姿勢とフィールドワーク、取材の苦労に耐える精神は、われわれ中国国内の研究者が尊敬し見習うべきものである。

図版が多く理解しやすい

この書籍で王敏教授は、読者の理解を深めるために、図版と文章を非常に合理的に組み合わせている。図版は109点、複写は9点、リストは8点を採用し、さらに必要な注釈や解説が付されている。

また、20ページ以上の表形式の図版があり、記述のくどさを和らげるだけでなく、当時の周恩来の活動場所、内容、頻度を的確に示している。この読みやすさと見やすさが、読者や聞き手の本書や、報告に対する理解度や受容度を大きく高めていることは間違いない。

王敏教授と周秉徳女史

深く探究し、学術性が高い

第二章中の「詩作の足跡」と「『雨中嵐山』を百年後に解読する」の2節は、南開大学での発表のテーマと同様に、周恩来が日本で作った2篇の詩の背景を考察し、その含意を導き出すものである。

この2篇の詩とは、周恩来が1919年4月5日の帰国前夜に京都の嵐山を訪れて詠んだ、「雨中嵐山」「雨後嵐山」である。その中の一節に「雨濛々として霧深く陽の光雲間より射して いよいよなまめかし 世のもろもろの真理は 求めるほどに模糊とするも――模糊の中にたまさかに一点の光明を見出せば 真にいよいよなまめかし」とある。

王敏教授は、この2篇の詩が成立した背景について深く考察し、研究した。彼女は、信頼性が高く、情報量が多く、権威のある歴史資料、個人的な現地調査、詩の記述の比較、詳細な分析を通じて、次のように結論づけた。

日本語の教科書の内容と周恩来の二度の嵐山への旅とは大いに関係があること。また2篇の詩作と周恩来の禹王との縁とは一定の関連性があること。詩に描写されている雨後の嵐山の風景は、青年周恩来の未来志向を表していること。

王敏教授と周秉宜女史

この研究の切り口は一つの新しい視点であり、その結果、周恩来の生涯の思想研究(特に日本留学期間)を大きく前進させた。

洗練された文章

簡潔な叙述

王敏教授は日本に40年以上住んでいるが、やはり中国の大連外国語学院と四川外国語学院で学んだ中国人であり、中国語の基礎ができており、知識も深く、文章が洗練されていて、言葉も簡潔である。

よって、専門書ではあるが親しみやすく、自然体となっている。実際、読みやすい本でなければ、読者がその本を愛し、読み続けることはできないだろう。

もちろん、本書にも一定の限界はあり、日本での周恩来の河上肇関連の著作の受け止めについての記述は相対的に不足しており、日本における周恩来の思想の変容と昇華はまだ練り上げる必要があろう。

今後の改訂で補完されることを期待したい。また、この書籍の中国本土での出版を期待したい。

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